中小企業のデータ分析・活用支援の事業を展開しているKUROCO株式会社が2018年に経営者150名、自営業者226名に対して行ったアンケートによると
経営者・自営業者の3分の1は相談相手がいないという事が分かりました。
日本では、国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構の「よろず支援」というサービスで経営者をサポートしていますがまだ十分に活用されているとは言い切れません。
米国やカナダなどで中小企業支援を行っている公的機関では、無償または少額の報酬によるボランティアで経営上の悩みの相談に乗る先輩経営者を、メンターとして新しく事業をスタートした経営者に引き合わせています。
日本のよろず支援のように会計や法律といった相談もありますが、それよりはむしろ、経営者としての経営判断のストレスを受け止めてもらう存在となっているようです。
いづれにしても日本の経営者は相談相手がいない、もしくは不足しているという事が言えます。
では経営者は実際、誰に相談をしているのでしょうか?次から詳しく見ていきたいと思います。
目次
相談相手①:同じ経営者
同じ経営者同士で相談をする事は多いです。しかしながら同業者だと経営上の秘密などを話す事ははばかれるものです。
ですから、上辺だけの相談をお互いしている事も多いはずです。
ただ、同業者だからこそ理解しあえる部分や情報もあるので同じ経営者として悩み解消につながる事もあります。
異業種の経営者に相談する事はメリットが大きいです。なぜならどうしても業界の考え方や見方など知らず知らずに凝り固まっている事もあります。
しかし異業種の経営者の場合そのような先入観がないので新しい視点や考え方を提示してもらえます。
また、自分よりも経営者としての手腕が上の人に相談するのも大切な事です。
特に中小企業の経営者は自身も現役のプレイヤーである事も多いです。そのために経営者としての視点とプレイヤーとしての視点がブレてしまう事があります。
経営者としての課題は自分よりも経営手腕が上の人からすればその経験から解決策の解答をもっている可能性が高いです。
自分の経営手腕と同じレベルの経営者に相談すると堂々巡りする事も多いので注意が必要です。
相談相手②:公的支援サービス
公的支援サービスを利用して経営相談するメリットは「費用が安い」「豊富なリソース」「公的支援制度の情報収集ができる」という事があります。
主な機関として以下のようなところがあります。
独立行政法人中小企業基盤整備機構
略称で中小機構とも呼びます。上記の専門家継続派遣事業を行っている中小機構では、相談窓口も設置しています。全国9カ所の地域本部で行う対面での相談や、電話、メール、オンラインでの相談も可能です。
https://www.smrj.go.jp/sme/consulting/tel/index.html
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、国が全国に設置する、起業者、中小・小規模事業者の方のための経営相談所です。多様な分野に精通した専門家が在籍し、相談者の状況に合わせて対応しています。
ワンストップ相談窓口”Plus One”
ワンストップ相談窓口”Plus One”は政府系9機関によるスタートアップ支援機関連携協定(通称Plus (プラス))に基づくワンストップ相談窓口です。
https://startips.nedo.go.jp/plusone/
他にも地方それぞれの機関もありますので、是非お住まいの地域の公的支援サービスをチェックして下さい。
相談相手③:金融機関
金融機関は経営上の様々な情報をもっているので相談をする機会が多いはずです。
経営上の悩みのひとつにお金の問題がありますが融資はその悩みを解決する大事なものなので日ごろから銀行とのお付き合いは大切です。
実績などから現在お付き合いのある銀行との関係をしっかり作る事も大切ですが他の銀行を完全にシャットアウトするのは良くありません。
実際にお付き合いのある銀行で断られても他の銀行で融資してもらえたケースは多いです。
担当者や支店長の人的要因でも融資の内容が大きく変わる事があります。
全国規模で相談できる金融機関を挙げます。
日本政策金融公庫
政府系金融機関である日本政策金融公庫では、経営者を対象に、経営に役立つ情報を提供しており、起業の悩みに対する相談窓口も設置しています。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/riyou/sougyoumae/
しんきん創業の扉
しんきん創業の扉は、地域に生まれ地域と共に生きる信用金庫の創業支援プラットフォームです。全国の信用金庫の相談窓口やイベント、創業に役立つ情報などを多数掲載しています。
https://www.shinkin-sogyo.net/
相談相手④:税理士
税理士はあなたの会社のお金の動きを把握しているので経営の相談をする事も多いはずです。
税理士も顧問契約をして包括的に経営のサポートをしている人も多いです。
しかし気をつけなくてはいけない事があります。それは税理士は、税の専門家として納税者が自らの所得を計算し、納税額を算出する申告納税制度の推進の役割を担うのが主な仕事という事です。
けっして経営の専門家ではないのです。実際に経営コンサルティングが出来る税理士が数%しかいないと言われています。
経営は数字の管理や理解も大切ですがそれ以外にも様々な要素があります。
きちんと経営コンサルティングできる税理士でないとあなたの悩みは解決できない事もあります。
経営者として税理士の力量や実績を評価する事も大切な事です。
相談相手:経営コンサルタント
経営コンサルタントに相談する事は次のメリットが期待できます。
経営戦略の策定サポート
財務・会計面のアドバイス
人事・労働環境の改善
マーケティング戦略のサポート
業務改善・付加価値のサポート
組織の強化 etc・・・
数々の企業と関わって実績を積んだ経営コンサルタントからは、最新の成功事例をはじめとしたノウハウやスキルを取り入れることが可能です。
効果的なアドバイスを提供してもらうことで、ビジネスの課題を解決したりビジネスに広がりを持たせることができます。
経営コンサルタントは星の数ほどいるのでいかにして経営者の悩みを解決できる経営コンサルタントを探せるか?が大切になります。
そのためには解決したい自社の課題はなにか?解決するために依頼したい業務はなにか?明確にしなければなりません。
漠然とした相談であってはどんな優秀な経営コンサルタントでも適切なアドバイスができません。
また、経営コンサルタントの実績をしっかりとチェックする事も必要です。
現代のビジネスのスピードは早いのでしっかりと時代の流れに対応しているか?SNSなどでの情報発信をチェックして自社との相性を知る事も大切です。
経営コンサルタントになるには特に資格はありません。ですから「玉石混淆」なのが実情です。
商工会・商工会議所
「商工会」と「商工会議所」の違いを簡単に言うと、町村部にあり小規模ですが地域に根付いた活動をしているのが「商工会」、市や特別区にあり比較的規模が大きめなのが「商工会議所」になります。
特に商工会は、小規模事業者にはおすすめです。
商工会では
①経営相談、経営指導員による巡回指導
②専門家派遣
③マル経融資・補助金
④セミナーやビジネス交流会
⑤退職金等の福利厚生制度
などのサービスが受けられます。
特に経営相談、経営指導員による巡回指導では経営指導員等から様々な経営課題についてアドバイスを貰う事が出来ます。経営に関するちょっとした悩みから、法律・税金・金融・労務など専門的な相談にも対応してくれます。
また、「マル経融資・補助金」は商工会を活用する大きなメリットです。
この活用が目的で商工会に加入している方も多いです。一般的に信用力が乏しい小規模事業者・個人事業主が、金融機関から融資を引き出すのはそう簡単な話ではありません。しかも無担保・無保証・低金利というのはありえないと言って良いでしょう。資金繰りで悩んでいて条件に合うのであれば、活用をお勧めします。
商工会は地域に密着したサポートをしてくれるのでとても頼もしい相談相手ですが、地域差や担当者によって温度差がでるので注意が必要です。
実際にクライアント様の中でも良い商工会にあたった方もいれば、あまり良くない商工会にあたった方もいました。
しかし商工会で、経営課題が解決出来る機会を得たり、会員限定のサービスや特典を受けられたり、地域での人脈を拡げられたり、資金調達の手段を増やせたりとメリットは多いです。
まとめ
先に採り上げたアンケートでも経営者・自営業者の3分の1は相談相手がいないという事が分かりました。
相談する相手がいないという事はビジネスの停滞を招く危険性がある事を経営者は理解しておかなくてはいけません。
そのためには
・適切な相談先を確保する
・問題解決したか検証する
・何に悩んでいるか?言語化する
・問題を先送りしない
・経営相談のセカンドオピニオンを置く
という事が大切になります。
今回、ご紹介した相談先を活用して少しでも経営者の悩みが解決して下さい。