ダイエットでは食べるカロリーよりも消費カロリーが大きければ痩せます。
経営においても経費などのコストよりも収益があれば健全な経営になります。
しかし、コストは聖域化されていたりブラックボックス状態になっている事が多いです。
場合によっては経営者ですらその詳細を把握していない事もあります。
今回は減らせば必ずそれなりの効果が望めるコスト削減についてお伝えします。
どんな会社もコスト削減が課題
コストとは「経費」です。具体的には人件費や水道光熱費、外注費やオフィスの賃料など、企業活動を行うために必要な、あらゆるものが経費になります。
どんな会社でもコストがゼロ円というところはありません。だからこそ細かく、細かく必要性を吟味してコストを管理する必要があります。
その際に気をつけなくてはいけないのは「何のためにコストを削減する必要があるのか?」を考える事です。
コスト削減は「利益を上げるため」です。もしも、売上の短期的な改善を図ることが難しい一方で、既存のコストであればすぐにでも削減可能なので、企業における重要な課題といえます。
会社経営が行き詰まる原因の多くがコスト増大によりキャッシュが不足して資金がショートしてしまうからです。
コストに取り組むのはすべての会社にとっての命題かもしれません。
変動費と固定費のコスト削減方法
コストを減らすには「固定費」と「変動費」の理解が必要になります。
一般的な企業が抱えているコストの例として
・電気や水道などの光熱費
・オフィスの家賃
・社員などの人件費
・商品の原材料費
・電話やインターネット回線に通信費
etc・・・
などがあります。
この中で「固定費」とは、売上の増減とは無関係に発生するコストを指すもので、これには水道光熱費やオフィスの賃料などが該当します。
一方で「変動費」とは
広告宣伝費、研究開発費、原材料費、車両運送費、外注費 などが該当します。
変動費とは、時期や売り上げによって変動するコストを指すもので、これには売上の増加にともなう仕入れ費用などが該当します。
企業のコスト削減に取り組む場合、まずは変動費よりも固定費の方を優先して考えていく必要があります。
なぜならば、変動費は商品やサービスの質そのものに直結する方法が多いです。例えば安易に外注業者を変更してしまうと短期的にはコスト削減になっても1から外注先を育てる事もコストになるので注意しましょう。
一方の固定費の削減は、対策のバリエーションが豊富かつ商品やサービスの質にも直接的な影響を及ぼさない方法が多くあります。代替がきくものが比較的多いです。
商品サービスの質を落とさないようにしつつ上手く固定費を見直してみましょう。
電気のコストを下げる
コストを削減するには電気関係の見直しがかなり有効になります。
特にオフィスまわりは電気を使うものが数多くあります。電気のコストをひとつひとつ見直してみる事が大切です。
稼働している限り毎日発生する電気代を削減するためには、日々の業務で用いる機器を見直すことが効果的です。
社内の照明をLEDに変更して消費電力を抑制
PCを電力消費の少ないノートPCに
印刷機器を複合機に一元化
サーバーをクラウド化し、社外に移設する
etc・・・
ひとつひとつは地味で小さなものかもしれませんが毎日の積み重ねですのでトータルで考えると大きな削減につながります。
オフィスの消費電力の約1/4は照明に使われています(資源エネルギー庁推計)。照明をLEDにすると、LEDは白熱電球や蛍光灯に比べて消費電力が少ないため、毎日の照明代を削減することができます。
照明を変えるのにはコストがかかりますが、コストの分岐点を超えれば後は実質的にコスト削減になります。
電気代の基本料金は過去1年間のピーク消費電力(デマンド;最大需要電力)をもとに決定されます。デマンドを抑えることで、電気代の基本料金を下げることができます。
例えば、リアルタイムで電力の利用状況を監視できるような仕組みを導入すれば社員全員で納得しながら設定したデマンド管理が可能になります。
DX化でコストを下げる
IT化とは「既存の業務プロセスは維持したまま、その効率化・強化のためにデジタル技術やデータを活用する」というイメージすると分かりやすいでしょう。
実例を挙げると以前は手紙や電話やファクシミリだったものが今はIT化で電子メールやチャットに移行していったのはIT化にあたります。
このようなIT化により紙の使用の削減やデータ化し易くなるなどのメリットがあります。ここまではイメージし易いのではないでしょうか?
次はDXです。DX(デジタルトランスフォーメーション)の英語表記は「Digital Transformation」ですが、「DT」ではなく「DX」と表記されるのはナゼ?と思うかもしれません。
事実は英語圏では慣用的に「transformation」の「trans」を「X」と略し、「X-formation」とするためです。日本人には分かりづらいですね。
非常に分かりやすい例を挙げると、コロナ禍でテレワークやオンラインでの仕事が増えた結果、オフィスが不要になった企業も出ました。
デジタル化する事で会社の業務以外にも、通勤時間や余暇までもコスト削減できる事が体験として分かりました。
特に日本においては、DX化と全く関係のない会社は無いと言っても過言なほどにDX化が遅れた地域になります。
それだからこそ、DX化は大幅なコスト削減につながります。
他社とのコラボでコストを下げる
「共同調達」という言葉があります。共同調達とは、企業が原材料や間接材などを調達する際に、他社と協力したり、グループ会社間で連携し合うことで、調達プロセスを一本化することを指します。
他社との協力はハードルが高かったり困難もありますが十分に検討・対策し、導入に成功すれば、大幅にコストを削減できる可能性があります。
共同調達する事で
①調達コストの削減
②事務処理にかかる作業量が減少
③他社の調達の実情
などを知る事ができます。
特に③の他社の調達の実情はこのように共同調達しなければ出来ない事なので価値があります。
特に同業者のコラボは秘密事項などもあり難しい面も多いですが上手くいけば大幅なコスト削減が可能になりますので検討の価値があります。
健康経営でコストを下げる
近年、健康経営が注目されています。
健康経営とは、経済産業省の「経済産業省におけるヘルスケア産業政策」によると下記のように定義されています。
従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、 健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること』
健康経営がコスト削減につながるか?疑問をもつ方もいるかもしれません。
しかし、SCSK株式会社(情報・通信業 社員数 約14,000名)という会社では、健康経営に取り組むことによって、月間平均残業時間が約10時間の大幅減少に成功(2011年度27.8h→2018年度18h)。2018年度の営業利益は前年度比約111%の増加を記録しています。
実際に社員が休職した時を想定してコストを考えてみましょう。
・休職中の月手当(月給6万円の2/3=27.7万円)×休職期間12ヶ月333.3万円
・発症/試し出勤中の計6ヶ月分の給与250万円
本人に支払う金額は583.3万円にもなります。
さらに
・既存社員の残業代+代替社員の教育費等6万円
・代替社員の給与×休職期間12ヶ月500万円
・上司・人事の対応(月1万円)×休職期間12ヶ月25.2万円
も必要になり発生コストは941.8万円になります。
合計すると社員一人が休職する事により計1525.2万円がかかる試算結果もあります。
資料引用:株式会社SUDACHI HP
短期的な売上にフォーカスして健康経営をしないという事は未来の大きな損失につながり、結果として大きなコストとして会社経営に重くのしかかるのです。
実際に日本総合研究所は、健康投資に積極的な企業の株価は全体に比べ高い値を示しているとの調査結果を発表しています。
また、ジョンソン&ジョンソングループが、世界250社、約11万4000人に健康教育プログラム(人件費:健康・医療スタッフ・事務職、健康指導等利用費・システム開発・運用費、設備費など)を提供したところ、健康投資1ドルに対して、3ドル分の投資リターン(生産性の向上、医療コストの削減、モチベーションの向上、リクルート効果、イメージアップなど)があったとされています。
まとめ
今回は会社経営の永遠の課題であるコスト削減について考えていきました。
私たちはコロナ禍を経験した事でこれまでとは違う視点でコストに対して向き合う事ができるようになったと思います。
初めにお伝えしたようにコスト削減の目的は「利益を上げるため」です。
しかし、その利益に健康経営的な考え方が入る事で
会社良し
社員良し
社会良し
という「三方良し」の形が出来ます。
会社の継続的な成長のためにも是非、コスト削減について考え行動していきましょう。