内閣府の『企業行動に関するアンケート調査報告書』で上場する企業の今後3年間で従業員を増やす見通しの企業の割合は70.1%と発表されました。
大企業はアフターコロナに向けて採用活動の見直し、増大を進めています。
この事は大手企業への人材流出がおき、中小企業の採用が厳しくなることが予想されます。
だからと言って今すぐに新卒採用や若手採用に着手したからといって、採用活動が上手くいくとは限りません。
今回は中小企業が直面している従業員確保について考えてみたいと思います。
新卒採用の認知問題
どうしても大企業は知名度が高く、多くの学生が認知しています。
ネームバリューがあるため、採用情報を出せば自ずと多数の学生が集まるでしょう。実際に一部大企業ではインターンシップが集中していて実質その中で厳しい選抜が行われています。
しかし、中小企業は大企業と比較して知名度が低く、そのような状況とは程遠いです。
また、採用情報を出してもなかなか応募者が集まりません。
また、同じ時期に大企業が大量に採用情報を出すと、中小企業の採用情報は他の求人に埋もれてしまいます。
さらに、中小企業の内定を得た学生が家族の意向によって内定辞退するという事例もあります。
新卒者の就職先の決定には親も積極的に関与する傾向があり、子供が無名の中小企業への就職を希望した場合、親がその会社の存在を知らないことや、ブラック企業かもしれないという不安から就職に反対するケースは少なくないようです。
中小企業はSNSなどを活用した積極的な情報発信をしたり、自社のブランディングを大手以上にしっかり取り組む必要性があります。
新卒採用における待遇の差をどうする?
大企業と中小企業の大きな差は待遇にあります。待遇を重視する学生はよほどの事が無い限りは中小企業には目も向けないでしょう。
ひとつの戦略として中小企業もマーケティング的な思考が必要になります。
これまでは、中小企業側が学生をふるいにかけていましたが今は、もう逆の構図になっている事を認証する必要があります。
待遇だけを重視する生徒はそもそもあなたの会社には縁の無いものと捉えてバッサリと切り捨てて考える事も大事です。
では、待遇以外に学生が興味をもつのはどんな事でしょうか?
それは「やりがい」や「働きがい」です。
会社として「目指している状態」や他社と明確に差別化できる「想い」や「自社の魅力」を訴求することも重要です。
待遇以外に興味をもつ学生の心理状態に寄り添いアピールする事が必要です。
特に中小企業だからこそ、採用活動に社長など自社のトップが介入しやすく、会社の意向を直接反映させやすいです。
面接や選考に社長が参加すると、求める人材に直接会って自ら企業の魅力や将来性などを求職者に伝えられます。
そうすることで、求職者にも魅力が伝わりやすく、社長が人事に対して積極的な姿勢を示すと好印象も与えられるでしょう。
欲しい人材を逃さないためにも、自社のトップが積極的に応募者と会うことは大切です。
高卒採用にも注目してみては?
即戦力という意味では大卒は魅力的かもしれません。しかし数年かけて成長してもらうというロードマップが描けるなら高卒の採用も進めるべきです。
高卒採用のメリットは、大卒採用に比べて採用プロセスが少なく、コストを抑えられる点にあります。
大卒採用の場合、インターンシップ、求人ページの制作、エントリーの獲得、説明会の開催、書類選考、筆記試験、面接、内定者決定、内定者フォローと、様々なプロセスがあります。
一方の高卒採用であれば、求人票の制作、学校訪問、職場見学、採用試験(筆記・面接)、内定者決定と、プロセスがかなり短縮化され、採用業務にかかる時間を少なく済ませることができます。
しかし、最近では誰でも情報を手に入れられるので、ただの頭数として高卒を採用するのではなく、きちんと教育して育てる仕組みを作る事が肝心になります。
そのようにしっかりと育てた人材の離職率を下げる事で中小企業の大切な戦力の離脱も防げます。
中小企業が大企業を出し抜くには?
中小企業は採用リソースが限られていることとも大きな問題です。
無料で求人の掲載ができるハローワークや、他社サービスを活用しない縁故採用、リファーラル採用などを募集方法のメインとしている中小企業が少なくありません。
縁故採用やリファーラル採用では、社員の家族や知人などの紹介に頼る採用方法のため、なかなか希望する人材要件を満たす人に巡り合えないという状況にあります。
特に新卒採用では、大手企業との真っ向勝負を避けて「大手企業の選考を通過しなかった人」を採用できるような採用スケジュールを組んだり、秋採用を行ったりする中小企業もあります。
大手企業と採用スケジュールをずらすことで対策できているように見えても、実際は採用に苦戦する状況をつくり出している場合もあります。
それに変わる「真っ向勝負」ではなく角度の違う採用活動が必要です。
そのためには大企業以上の情報発信をする事がこれからは大切です。
特にホームページは、あえて学生いアピールするページを再構築する必要があります。
それに加えてTwitterやnote、Instagram、その他のSNSを有機的につなげていく事が大切です。
採用コストがかけられない分、いかにアピールできる情報を多く発信できるか?社内で共通意識をもつようにしましょう。
中小企業においてはSNS運用などはどこか片手間にやるものだとか、遊びと捉える傾向もありますが、学生は人です。SNSを通してお互いの交流をはかる事を目標に運営しましょう。
また、予算があれば、採用管理システムや面接ツールを導入し、自動化していくと採用活動の効率が上がります。
情報の管理やコミュニケーションが容易になり、業務負担を減らせるほか、、メールの誤送信など人的ミスの防止にもなります。
学生に低コストで自社の魅力を伝えるために、ダイレクトリクルーティングを取り入れるのもおすすめです。
ダイレクトリクルーティングは、自分たちから優秀な学生にアプローチする採用手法のため、認知度の低い中小企業の採用活動の一助になるからです。
学生が自社のサイトを見に来てくれないなら、こちらからスカウトメールを送って接点をつくることができます。
「求人サイトに掲載しても年収が低いから大手の求人に埋もれる」場合は、社風ややりがいなどのソフト面で学生にアプローチすることが可能です。
まだやれる事は多くあるのです!
まとめ
中小企業の人材不足はまったなしの状態です。
人材不足を解決するヒントとして早めの事業承継を考える事も必要だと思います。
帝国データバンクの全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)によると、後継者不在率は全国で65.1%となっており、3社に2社が後継者不在の状態です。
後継者がおらず、経営者が高齢になるとアイディアや打ち手にも限界があります。
若い世代に適切なタイミングで事業承継をして、会社を若返らせる事で良い経営指針につながったり、学生から見ても魅力的な会社に変貌をとげる可能性もあります。
「中小企業には学生が来ない」と嘆く前に自社の自浄も必要なのです。
最近は、就職先の企業に「楽しさ」や「働きやすさ」を求める学生が増えています。
株式会社マイナビの調査だと、2023年卒の大学生・大学院生の就職観でもっとも多かった回答は、「楽しく働きたい」の37.6%でした。
次点が「個人の生活と仕事を両立させたい」の22.7%です。給与や出世よりも、仕事の魅力や働きやすさを重視する学生が多いことがわかります。
出向が少なかったりアットホームな環境だったりすることが多い傾向の中小企業は、大企業よりも「働きやすさ」という希望を叶えやすいといえます。
まだ中小企業にもやるべき事がたくさんあるのです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。