中小企業にとって人材は大企業よりも大切なものです。
大企業はそのネームバリューや資金などから、人材を確保し易いのに較べて中小企業はその逆でかなり大変です。
そして、人材はただ確保するだけでなく育成していく事が大切です。
大企業においてもきちんと人材育成がされない場合は株主や社員、お客様からの評価も下がってしまいます。
中小企業においては大企業以上に人材育成にお金と時間をかけなくてはいけないのですが現実は厳しいです。
今回は中小企業の人材育成と課題を考えていきます。
目次
なぜ人材育成が必要なのか?
中小企業においては企業規模が小さいほど人材育成の方針が定まっていないことや、将来的な事業展開を考慮せずに人材育成を実施している傾向があります。
特に、どんぶり勘定経営であったり、旧態然とした業界、儲かっていない中小企業においてその傾向が強くなります。
もちろん、ビジネスですので「儲かること」は至上命題ですが、会社としての経営目的や方針が曖昧なまま人材育成を実施すると、従業員の成長が促進されにくくなります。
つまり、売上以前の会社の理念や考え方などの一体性が求められるのです。それをベースに自社における人材育成の在り方を見直すことが大切です。
人材育成の見直しにあたって、まずは「なぜ自社では効果的に実施できていないのか」「そもそもなぜ人材育成自体を実施していないのか」等を把握する必要があります。
具体的な中小企業の人材育成の課題
人材育成に関して、中小企業が抱える具体的な課題を考えてみましょう。
育成に携わる指導者不足
優秀な人材を育成するには、指導者が必要です。しかし、資金や規模が限られている中小企業では、指導者を探すこと自体が難しいケースがあります。
仮に優秀な指導者が現れたとしても、そのノウハウを社内に浸透・蓄積させることは容易ではありません。指導者が次の指導者を育てる、わかりやすいマニュアルを作成するなどの方法が考えられるが、いずれにしても時間やコストがかかるのがネックです。
育成のノウハウ自体がない
人材育成のノウハウ自体がない中小企業も多いです。これまで事業規模の拡大を経験してこなかった中小企業は、育成のノウハウを蓄積していないことが多いからです。
OJTによって先輩が後輩に仕事を教える方法もあるが、スムーズに知識・スキルが継承されるとは限らないです。見て覚えられる業務には限りがあるからです。
それを補うために丁寧に説明しようとしても、先輩の「伝えるスキル」にはバラつきがあるため、上手く伝わらないケースが多いです。
従業員が業務に追われ、教育を受ける時間が確保できない
業務が忙しいため、そもそも教育を受ける時間を確保できないことも深刻な課題です。
規模が大きくない中小企業はキャパシティが小さいため、どうしても教育・研修が後回しになってしまいます。
この状況では、仮に優れたカリキュラムがあっても、それを活かすことができないです。もちろん、指導者側のキャパシティも空けなければならないため、会社全体の業務を見直す必要があります。
育成にかけるコストが不足している
企業によっては、「育成コストを捻出できない」ケースも多いです。経営難に陥った企業は、人材育成よりも経営回復に注力する必要があるため、育成コストを準備する余力がありません。
無理をして育成にコストをかけると、運転資金が足りなくなる恐れがあります。経営破綻の可能性があるなら、そもそも人材育成に力を入れている場合ではないからです。
採用者の定着率が低く、継承する前に離職してしまう
「人材の定着率が低い」ことは、多くの中小企業にとって悩みの種です。人材が定着しなければ、知識やスキルを継承することは難しいです。
また、人材育成がひと通り終わったタイミングで離職されると、時間やコストをかけても徒労に終わってしまいます。さらに、離職者が出ると各従業員の負担が増えるため、新たにリソースの問題が発生する悪循環に陥ります。
人材育成の課題の解決方法
まず最初に明らかにしなくてはいけないのは、中小企業には中小企業ならではの人材育成の良い点が必ずあると理解する事です。
ともすれば大手企業と比較してしまいがちですが、比較したところで資金やマンパワーの不足は解決しません。
中小企業でも取り組める解決方法を2つ取り上げています。この2つを体系的に、かつ継続的に行う事が中小企業にとっては必要です。
1on1ミーティング
1on1ミーティングは会社の大小に関わらず効果が期待される方法です。
1on1ミーティング(以下1on1)とは、上司と部下が1対1で行う対話のことです。
1対1の対話というと、評価面談を想像する方も多いかもしれませんが、目的や実施方法に大きな違いがあります。
1on1は、たいていの場合、週に1回、最低でも月に1回実施します。
また、1回の実施時間は30分程度で設定している企業が多いようです。もちろん会社やチーム、職種によっても異なりますが、「短いサイクルで定常的に実施する」ことが通常の面談と1on1の大きな違いです。
1on1ミーティングのおかげで、上司と部下双方の不安や不満の払しょくだけでなく、経営的にも現場で何が起きているか情報を吸い上げられるようになり、人材育成の施策に反映できる効果をもたらしている事例もあります。
OJT力の強化
近年、メンターやブラザー・シスターなどの仕組みを取り入れる企業が増えていますが、意外とOJTのやり方は現場任せになっています。役割認識や1ランク上への成長に必要な要素は「Off-JT研修が1、上司や先輩のアドバイスが2、現場経験が7」と言われるほど、OJTは重要です。
ポイントとしては、しっかりとOJTができる先輩社員を外部研修などを通じて育成することです。
OJTのメリットとしてまず、即戦力が身につくという事があります。
OJTは実践のなかで仕事を覚えていくため、実務に関する知識やスキルが早く身につきやすいです。また、入社2年目、3年目のような若手社員にとっても、OJTで教育する側に回ることを通して、スキルや知識が定着しやすくなることも重要なポイントといえるでしょう。
他にも、OJTには一人一人の理解度や習熟度に合わせて育成できるメリットがあります。
実務を一通り経験しただけで業務を実践できるケースもあれば、複数回取り組まないと理解が深まらないケースもあります。OJTは全体研修とは異なり、一人一人が実際の業務を通じて学んでいくため、個人の理解度や習熟度に合わせて育成していくことができます。
人材育成に使える助成金など
活用し易い3つの助成金をご紹介します。
キャリアアップ助成金
人材開発のための助成金として、「キャリアアップ助成金」があります。非正規雇用の労働者のキャリア形成を図るため、体系的な人材育成制度を導入する取組みに対しての助成金です。非正規社員の「正社員化」や、非正規社員への人材育成など、厚生労働省が定めた8つのコースに当てはまる企業が受け取ることができます。非正社員の扱いを正社員に近づけ、正社員になれるようにキャリアアップ支援を行っていることが条件となります。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、正社員のキャリア形成を図るため、体系的な人材育成制度を導入する取組に対しての助成金です。「キャリアアップ助成金」とは違って、主に正社員のスキルアップ・キャリアアップに対しての取組みを支援しようとする助成金が、この人材開発支援助成金です。教育訓練をする、「訓練関連コース」とキャリアカウンセリングの導入などの制度作りに関する「制度関連コース」の2つがあり、コースによって補助金の額が変わります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、経路計画に基づいて、小事業者の地道な販路開拓などの取組を支援するための補助金です。対象となる経費としては、機械装置費、開発費、広報費など、比較的幅広い経費を補助してもらえる補助金です。補助の上限はおよそ50万円で、補助率は2/3以内と、他の補助金と比べると補助額は少し小さくなってしまいますが、小規模事業者向けの補助金として活用することができます。
まとめ
中小企業における人材育成は、一気に育成しようと焦らない事が大切です。
自社の人材を大切にして会社の成長とリンクさせる形で社員の育成を中長期的に計画していう事が大切です。
また、その責任に見合う待遇を用意する事も中小企業の人材育成においては重要です。
会社の将来のために、お金と時間の投資をためらわない事が必要になります。
ですから、人材確保の段階で共通の人敷くとして共有しておく事も大切な人材の流出や離脱を防ぐ事につながります。
2020年1月21日に一般社団法人 日本経済団体連合会が行った調査によると、回答した9割弱( 88.8%)の企業が 人材育成に対応できていないとしています。
早くこの問題にメスを入れた企業だけが生き残る確立が高くなるはずです。
諦める前に、「どうやったら自分たちらしい人材育成ができるか?」一度、全社で話し合いをして決めてはいかがでしょうか?
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。