日本の中小企業における男性の育児休業取得率は、まだ低い水準です。
厚生労働省の最新の調査(2021年)によると、従業員301人以上の企業では、男性の育児休業取得率が13.6%だったのに対し、100人以下の中小企業では5.3%と低くなっています。
その背景には、以下のような課題があげられます。
・長時間労働や人手不足などで、男性が長期の休暇を取ることが難しい職場環境
・男性の育児参加に対する理解が十分でない企業風土
・収入減への不安から、育休を取りにくい経済的事情
・先駆者がいないため、制度自体が浸透していない
一方で、政府は男性の育休取得を促進するため、中小企業への支援策を拡充しつつあります。企業の意識改革とともに、より働きやすい環境整備が重要な課題となっています。
今回は男性の育休取得を考えてみました。
中小企業の男性育休取得支援のポイント
中小企業の男性育休取得支援のポイントは以下の3つがあげられます。
中小企業における男性育休取得の重要性
中小企業における男性の育児休業取得は、働き方改革の視点から見て重要な課題です。長時間労働が常態化している中小企業では、男性が育児に参加するための育休取得が容易ではありません。しかし、従業員のワークライフバランス実現は、企業の生産性向上や人材確保にもつながります。多様な人材が活躍できる環境づくりのためにも、男性の育休取得を後押しすることが不可欠なのです。
男性が育休を取得するメリット
男性が育児休業を取得することには、さまざまなメリットがあります。第一に、仕事と育児の両立ができ、家庭生活の充実を図ることができます。第二に、父親が子育てに関わることで、母親の育児負担を軽減できます。第三に、父子の絆が深まり、子どもの健全な成長につながります。さらに、休暇を取得する際の所得補填措置もあるため、経済的な不安も和らぎます。
男性の育休取得率向上への取り組み
男性の育休取得率を高めるためには、企業と社会全体の意識改革が欠かせません。政府は中小企業への支援を強化し、育児休業の取得促進に向けた企業への助成金を拡充しています。また、テレワークの推進も男性の育休取得を後押しします。企業としては、上長の理解を促し、部下の休暇取得を応援する風土づくりが重要です。そして、一般の人々の意識改革を図り、男性の育児参加が当たり前と受け止められるよう、SNSなどを通じた情報発信にも努める必要があります。
中小企業の育休取得支援制度
中小企業の育休取得支援制度を取り巻く現状は以下のとおりです。
中小企業における育休取得支援制度の助成金
政府は中小企業における従業員の育児休業取得を後押しするため、様々な助成金制度を設けています。主な制度として、「育児・介護雇用安定等助成金」「育休中等業務代替支援コース」があります。これは、育児休業を取得した労働者に対して一定の支援金を支給するものです。正社員だけでなく、パートタイム労働者や契約社員にも助成金の対象が広がっています。さらに、代替要員を確保した場合の支援金制度や、育休から復帰後の職場復帰支援金なども用意されています。
男性育休取得を義務化する制度導入
より一層、男性の育休取得を推進するために、政府は「パパ休暇」といった新たな制度の導入も検討しています。これは一定期間、男性労働者に育児休業を義務付けるものです。欧州各国などでは既に同様の制度が整備されており、父親の育児参加を後押しする効果が期待できます。企業にとっては、制度導入への準備が必要となりますが、長期的には人材の定着や生産性向上につながるでしょう。
育休取得のための手続きと申請方法
実際に育児休業を取得するためには、一定の手続きと申請が必要です。まずは会社の就業規則で育休の取得要件を確認し、出産予定日から概ね申請時期を把握する必要があります。その上で、所定の育休申請書と必要書類を人事労務部門へ提出します。審査を経て許可が下りれば、育休取得の準備に入ります。会社へも育休の時期や復帰時期など、スケジュールを十分に伝えることが大切です。制度を利用しやすい環境を整えるのは企業の責務でもあるため、従業員と綿密にコミュニケーションをとることが重要となります。
男性育休取得支援の仕組みと運用
男性育休取得支援の仕組みと運用はこの3つが重要です。
中小企業における男性育休取得支援の具体的な仕組み
中小企業における男性の育児休業取得を支援するための仕組みとして、国や自治体による助成金制度が設けられています。育児休業取得時の所得補償や、代替要員確保の費用助成などがあり、経済的な負担を軽減することができます。また、社内の環境整備として、育休取得を希望する従業員への相談窓口設置や制度の周知徹底、上長への研修実施なども重要な取り組みとなります。さらに、テレワークの活用などで業務の柔軟な遂行を可能にし、育休取得をより実現しやすくすることも一案です。
男性育休取得における大企業の事例と比較
一方、大企業では既に男性の育休取得を前提とした仕組みが整備されつつあります。フレックスタイム制の導入や在宅勤務の推奨などで柔軟な働き方を促進しているほか、上長の理解を深める研修を継続的に実施しています。さらに、一定期間の育休取得を義務付ける「イクメン休暇」といった独自の制度を設けている企業もあります。中小企業は大企業に比べ人的・財政的な余裕が小さいため、同様の取り組みには至っていない状況です。
労務管理との整合性を図る男性育休取得支援
中小企業における男性の育休取得支援を運用する上で重要なのが、労務管理との整合性です。育休取得者の業務が滞ることなく、適切に代替要員を確保する必要があります。人員の配置転換や、外部人材の活用なども視野に入れる必要があるでしょう。また、育休取得前後で公平な人事評価を行い、昇給・昇格などに不利が生じないよう留意しなければなりません。このように、経営資源の効率的な活用と公正な人事制度の構築が、男性育休支援の鍵を握ることになります。
男性育休取得支援の課題と改善策
男性育休取得支援の課題と改善策はこの3つが考えられます。
・中小企業が直面する男性育休取得支援に関する課題
中小企業が男性の育児休業取得を支援する上で直面する主な課題は、人手不足と経済的負担です。育休取得者の業務をカバーするため、代替要員の確保が必須となりますが、中小企業では人材が限られています。また、育休取得中の所得補填のための助成金制度があるものの、その金額は十分とは言えず、経営への負担が避けられません。さらに長年の企業風土から、男性の長期休暇への理解が浸透していないことも課題の一つです。
男性育休取得支援のための新たな法改正とは
政府は2025年を目処に、男性の育児休業取得を一定期間義務化する新たな法改正を検討しています。この「パパ育休」と呼ばれる制度は、欧州諸国で既に導入されており、男女間の家事・育児分担の均等化を促す効果が期待されています。ただし中小企業側からは、人手不足が深刻化する懸念の声もあがっています。法改正に向けては、企業の実情に合わせた制度設計と、政府による手厚い支援策が不可欠となります。
男性育休取得を促進するための施策と解決策
中小企業における男性の育児休業取得を一層促進するためには、以下のような施策が考えられます。まず助成金制度の拡充です。休業手当の支給率を引き上げ、経済的負担を軽減する必要があります。次に人材確保支援の強化です。代替要員の派遣やマッチングシステムの構築などに、政府や自治体が積極的に関与することが求められます。さらに意識改革の推進も重要です。従業員研修や社会全体への啓発活動で、男性の育休取得を当たり前の風潮にしていくことが不可欠でしょう。
まとめ
中小企業における男性の育児休業取得率が低い背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。
長年の働き方の慣習から、男性の長期休暇が難しい環境
収入減への経済的不安
上司や同僚の理解不足による制度の浸透の遅れ
マネジメント層の意識改革の遅れ
-人手不足などで業務分担が難しい
こうした状況を変えていくためには、企業経営層や管理職の意識改革はもちろん、政府による支援策の充実、社会全体での男性の育児参加に対する理解の促進など、多方面からのアプローチが必要不可欠です。
一朝一夕には変わらない難しい課題ですが、ワークライフバランスの重要性が認識されつつある現在、着実に前進していくことが期待されます。企業文化や価値観の変革に時間はかかりますが、将来的には男性の育休取得も当たり前のものになっていくでしょう。
あなたの会社はどのように男性の育休取得増加のための施策をしていますか?
最後まで読んでいただきありがとうございます!