聞き慣れない中小企業の経営者も多いと思いますが、サステナビリティ情報開示制度とは企業が環境、社会、ガバナンスの3つの側面から、持続可能な社会づくりにどのように貢献しているかを明らかにする制度です。
2023年3月期決算から、上場企業に対して有価証券報告書等でのサステナビリティ情報の開示が義務付けられました。
具体的には、CO2排出量削減の取り組みや、従業員の多様性に関する指標などを開示することが求められています。
今回はこの制度のあらましと中小企業がどのように対応していけばいいか?まとめました。
制度導入の背景
この制度の導入は、投資家の関心の高まりが大きな要因です。近年、企業の財務情報だけでなく、環境・社会への配慮も重視する「ESG投資」が急速に広がっています。
投資家は企業の長期的な価値創造力を評価する際、財務情報だけでなく、サステナビリティ情報も重要な指標となっているのです。
そのため、企業にとっては、この制度への対応が新たな課題となっています。決算後3か月以内という短期間で、関連情報を整理し、報告書にまとめる必要があります。そのため、日頃からサステナビリティ情報の収集と整理が重要になります。
また、国際的な基準に沿った開示が推奨されており、企業は情報の質を高めていく必要があります。金融庁が企業向けのガイドラインを公表するなど、制度の定着に向けた支援も行われています。
制度の意義と今後の展望
この制度の導入により、企業はサステナビリティへの取り組みを見直し、改善する機会を得ることができます。一方、投資家は企業の長期的な価値創造能力をより正確に評価できるようになります。
今後は、開示される情報の質を高めていくことが課題となります。また、企業と投資家の対話を深化させ、サステナビリティ経営の実践につなげていくことが期待されています。
サステナビリティ情報開示制度は、企業と社会、投資家をつなぐ重要な役割を果たします。この制度を通じて、企業の持続可能な成長と、社会全体の持続可能性の向上が実現されることが期待されているのです。
中小企業とサステナビリティ情報開示制度
現在、サステナビリティ情報の開示は主に大企業や上場企業に求められていますが、その重要性は中小企業にも広がりつつあります。
その背景には時代が求める要因があります。まず、投資家の関心の変化が大きな影響を及ぼしています。
従来の投資判断は主に大企業の収益性が中心でしたが、近年では環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みも重視されるようになってきました。いわゆる「ESG投資」の広がりにより、中小企業への投資判断においても、サステナビリティ情報が重要な指標となってきているのです。
次に、大企業との取引関係の変化も見られます。大手企業が取引先の環境対策などを確認するようになってきており、中小企業にもサステナビリティ情報の開示が求められるようになってきています。例えば、自動車メーカーが部品を調達する際に、サプライヤーである中小企業の環境配慮の取り組みを確認するといった具合です。
さらに、世界的な潮流としても、ヨーロッパでは一定規模以上の企業に対してサステナビリティ情報の報告を義務付ける動きがあります。日本の中小企業でも、海外と取引をする場合には同様の対応が必要になる可能性があります。
そして何より重要なのは、中小企業自身の持続可能な経営にとって、サステナビリティ情報の開示が意味を持つことです。自社の環境・社会への取り組みを示すことで、取引先や投資家から「長期的に安心して取引できる企業」と評価されることにつながるのです。
中小企業への支援の必要性
ただし、中小企業にとっては、サステナビリティ情報を体系的に整理し、報告書にまとめるのは大きな負担となる可能性があります。
そのため、行政や支援機関による具体的な手引書の作成や説明会の開催など、中小企業への支援が期待されています。
例えば、どのような情報をどのように開示すればよいのか、具体的な方法論を示すことが重要です。また、中小企業が自社のサステナビリティ活動を棚卸しできるようなツールの提供なども考えられます。
まだ中小企業は義務化されていないので、今のうちに準備をする時間が残されています。
少しずつ準備を進めていくことが重要です。例えば、省エネの取り組みや地域貢献活動など、自社で行っているサステナビリティに関する活動を整理し、情報開示の基礎を作っておくことが考えられます。
また、SDGsの17の目標と自社の事業活動を関連付けて、具体的な行動計画を立てることも有効です。SDGsの理解を深め、自社の経営課題とどのように結び付くかを明確にすることで、サステナビリティ経営の実践につなげられるでしょう。
このように、サステナビリティ情報の開示は、中小企業にとっても無関係ではありません。むしろ、自社の強みを再確認し、より良い経営につなげるチャンスと捉えることができます。
まとめ
中小企業とはいえ、利益以外のサスティナブルな活動の情報開示が求められる時代になりました。
面倒くさい
我が社には早い
そんなものにリソースはさけない
など様々な理由はあると思います。しかし、国際的な流れに逆らう事はむしろ自社の存在価値を落とします。
これをチャンスに経営改革をするつもりで捉えていけば長期的に見れば絶対に損にはならないはずです。
他にもやらなければいけない事は多いと思いますがぜひ、サステナビリティ情報開示制度への対応もすすめていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。