国税庁が発表する令和2年度「会社標本調査」によると、日本の会社の96%以上は「同族会社」で、資本金1億円以上の大きな会社でも50%以上がこれに該当するそうです。
正確に言えば、「同族会社」=「家族経営・同族経営」ではけっしてありません。
しかし、何らかの形で日本の会社の大半に創業者やその親族が関わっていることは確かです。
これまでは「一体性」や「継続性」という観点からそれでも良かったかもしれません。
しかし、日本の国際競争力が確実に落ちている今、自社だけではなく日本全体の問題として家族経営を考える時期に来ているかもしれません。
今回は経営者として家族経営を考えてみました。
家族経営の定義
家族経営という言葉自体が曖昧なので少し定義づけしたいと思います。
一般的に家族経営とは、創業者やその家族(創業家)など特定の親族が所有・経営する会社のことです。
同族経営、同族企業、ファミリービジネスなどといわれることもありますが、注目すべきは法律で定義が特に決められているわけではありません。
通常は所有と経営が分離されている場合でも、実質的な支配権を持っているのが家族経営の特徴です。
自身のこれまでのビジネスの経験から思い返しても9割は何らかの形で家族経営の会社でした。
個人的な感想ですが、家族経営の場合、初代は良いのですが代が代わる度に会社としてのダイナミズムが失われる会社が多いと思います。
家族経営のメリット
家族経営のメリットとして一番に挙げられるものが「意思決定の早さ」があります。
諸刃の剣でそのために、家族以外の考えが反映されないというデメリットが共存しますが、ビジネスはスピードが勝負な部分もあるので意思決定の早さはメリットです。
株式会社という形態で考えると、経営陣と株主が別になっている企業の場合、何か大きなことを決断するときに先に株主側の意見を聞かなければなりません。
その点、家族経営の会社の場合は経営陣と株主は一体化しているのが特徴です。これにより、いちいち株主側の意見を取り入れたりする必要がなくなるため、意思決定のスピードを早くさせられるというメリットがあります。
他のメリットとして、経営理念や経営方針が社内で共有し易いという事があります。
家族や身内であれば、家族や親族外の外部の人間よりも一緒にいる時間が長いので話し合う機会も増えます。
そのため、ディスカッションする時間もあり、お互いの考え方を理解しやすくなる土壌が自然にもてます。
また、経営陣が経営理念をよく理解しているということは、身内以外の従業員たちにも良い影響を与えます。同時に、経営方針にも一貫性を持たせることができます。
他にも「長期的な経営戦略を構築できる」のも家族経営のメリットです。
経営陣と株主が一緒だと安定しているので、何十年にも渡っての経営戦略を立てることができます。創業者の子の代、孫の代と世代を超えた経営ができるため、目先の利益にとらわれることもないからです。
このような理由から、10年、20年先の未来を見据えた長期的な経営戦略を立てられるのが家族経営のメリットと言えます。
家族経営のデメリット
家族経営にはデメリットも多いです。
まず、よく挙げられるのが「ワンマン経営になりがち」という事です。
家族、親族の考え方や利害が時には優先されていると誤解される事も多いです。
リーダーシップを発揮しやすい反面、独裁的なワンマン経営でブラック企業化する可能性があります。
他にも、家族や親族が優遇されるがゆえに、逆に社外の人間を冷遇して、適正でない人事がされる事もデメリットです。
家族や親族間では納得できても、客観的に見ると矛盾や問題がはらんでいる事が多いです。
特に人事においては家族、親族の垣根を一度、外してうえでニュートラルに考える必要があります。
他のデメリットとして、気づかない中での、お金や人材の私物化が起きる危険性もあります。
お金や人材の公私混同が発生することがあります。特にお金の面では、自家用車を経費で購入する、プライベートな費用を福利厚生費などで計上するなどが起こりがちです。
問題ない家族経営にするには?
問題ない家族経営にするには家族経営のメリットを活かしつつ、デメリットをなくしていく視点が必要です。
お金の流れと比べて人事は分かりやすいものです。そのために家族、親族以外の幹部を経営陣にバランスよく入れる事が大切です。
このように経営陣に家族、親族以外の人間を入れる事でガバナンスの体制が良くなります。
特に家族経営で多い「会社の私物化」を回避するためにも会社のガバナンス体制を強化させるのです。
家族、親族一族のみでの経営では、どうしても視野が狭くなりがちです。その時に危険が訪れます。
体制を崩さずに機能面をたまメルには「社外取締役」という客観的な立場で経営の監督を担ってくれる役職の設置がオススメです。
この役職を設置することで、経営陣の不正、会社の私物化などを防ぐことができます。
また、透明性の高い評価制度を構築する事も大切です。
この評価制度は経営陣だけで共有するものではなく全社員で共有するあたりまえのものにする事で初めて透明性を担保されます。
評価制度が絵に描いた餅では逆に不信感の元になるので注意が必要です。
まとめ
ともすれば、家族経営は悪者に捉えられがちですが、スイスのザンクトガレン大学の研究者らは「売上が高い同族経営企業500社」をリストアップした。世界の企業の80~90パーセントは同族経営で、各国の経済で重要な役割を果たしています。
会社の永続性を考えると家族経営は良い選択肢とも言えると思います。
しかし、日本においては閉鎖的な経営からネガティブに捉えられている事も多く、実際に弊害も多いです。
家族経営のメリットを最大限に活かしてデメリットを減らす事でさらなる成長も期待できます。
もし、家族経営をされているのでしたら是非、希望をもって改革に取り組むきっかけにして下さい。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。