「経営」という物差しで考えると法人経営者と個人経営者には違いがあると感じます。
もちろん、どちらが優れているという優劣の話ではありません。
実際に企業の社長をしながら個人事業主も営んでいる経営者は多いです。
今回は「経営」の視点から法人経営者と個人事業主の違いを考えてみます。
法人経営者とは
社長の違いは会社法における法的な位置づけにあります。
個人経営者でも「社長」と名乗る事は可能ですが、法人経営者の場合の社長とは商業登記によって与えられた法人格という仮想の人格を、社長が個人=自然人としての地位のまま代表します。
つまり「社長」という総称に、法的な地位を付与したのが「法人の社長」ということになります。
個人経営者においては法的な地位は社長という呼び名に紐づいていないのです。
手続きの違いからもハッキリと区別できます。法人であれば「法人設立届」を本店所在地の税務署や都道府県、市区町村に提出することになります。
また、個人事業主は「開業届」を納税地を所轄する税務署に提出します。
個人経営者とは
一般的に個人経営者という呼び名は個人事業主やフリーランス、自営業とほぼ同義で使われています。
商業登記に基づく法人格のある仮想の人格を社長が代表するのとは違い、個人経営者は同一の人格と考えると分かりやすいです。
開業届を税務署に提出して経営する人は個人事業主であり個人経営者と言えます。
事業主一人のみで事業を行う場合に限らず、家族や従業員などと複数で事業を行っていても、それが法人(会社)でなければ個人事業主と言えます。
仮にやっている仕事が法人の社長と同じでも個人経営者は法人格が無いのであくまでも個人の収益に課税されます。
法人経営と個人経営の大きな違い
法人経営と個人経営には色々なメリット・デメリットを含む違いがあります。
しかし、その中でも一番大きな違いは税金です。税の種類が違うのです。
個人事業主が支払うのは、個人に課税される所得税。1年間で得られた儲けに対してです。
儲けは1月1日から12月31日までの売上の合計額(総収入金額)から、必要経費を差し引いた金額です。
一方で、法人の所得に対して課せられるのは法人税です。法人税は必要経費として認められる範囲が広く、税率が穏やかな点が特徴です。
納税は事業年度ごとで、法人税は大きく儲かった時でも税負担の割合はあまり変わりません。
個人事業主の場合1年1年で決算が区切られますが法人の場合は「期」でつながっています。
また、個人経営の場合、赤字になった場合は所得税を納めなくてもよいですが法人経営の場合は赤字でも法人税は納める必要があります。
数字の理解に違いが出る
法人経営と個人経営を「経営」という観点から見るとやはり法人経営の方が広範囲な知識や理解が必要です。
個人経営者の多くは自分で確定申告をしています。処理量は多くとも、収入や経費の計上についての判断がそれほど難しくない場合が多いためです
それに対して法人経営の場合は各別表(税務申告には複数の書類を作成して提出する必要がある)の連動性を理解が必要とされます。この時点でかなりレベルが違います。
個人事業の場合は収入から経費を除いて利益を出せば、簡単に所得が求められますが、法人の場合は財務会計上の利益と法人税法上の所得が異なるため、財務会計上の利益を調整して税法上の所得を算出しなければなりません。
法人の場合はこのような税務申告は専門家が行うにしても、その数字の意味や内容を把握していなければ経営ができません。
冷酷な話ですが、商工会の担当者から実際に聞いた話ですが、どんぶり勘定の会社はやはり赤字経営が多いという事でした。
数字で判断できる事が法人経営者に求められる大きな資質といえます。
まとめ
最初から法人を設立してビジネスをする人もいますが、個人経営者から初めて法人化する人も多いです。
個人に課される所得税の税率は、「最低5%~最高45%」という具合に、所得(利益)が増えれば増えるほど税率自体も高くなるように規定されています。
そのため、多額の利益が出ているにもかかわらず、いつまでも個人経営者として事業をおこなっていれば、納税額の負担は、どんどん増えていってしまうというのが現実です。
そのため法人化するいわゆる「法人成り」を考える人も多いですが法人格の有る無しに加えて数字で経営を把握する事を個人経営者のうちから徹底する事をおすすめします。
私の周りは個人経営者であっても月次決算を普通にされている方も多いです。
「数字」にこだわる事が法人経営者と個人経営者の一番の違いになるのです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。