日本の中小企業における社員教育はまだ不十分だという事は多くの経営者が実際に感じている事でしょう。
しかしながら
– コストや人手不足などの理由で、教育機会が限定的であること
– 経営者の教育に対する意識が低く、形骸化していること
– 教育内容が会社のニーズと乖離していること
– 効果検証が不十分で、教育の質の向上につながっていないこと
などの課題があり、その改善が進められていないのが現状です。
中小企業においてはある意味、大企業よりも社員が大切な財産という要素が大きいです。
今回は中小企業の経営者が社員教育において注意すべき点をまとめました。
目次
社員一人ひとりの特徴やニーズに合わせた教育を行う
社員一人ひとりの特徴やニーズに合わせた教育を行うためには、まずは、定期的な面談を実施し、社員の仕事に対する思いや目標、スキルの現状と改善点を汲み取ることが重要です。
そして、面談内容をもとに、社員ごとの教育計画を立てます。これが出来ない会社が多いです。
例えば、営業職でプレゼン力が課題の社員には、外部セミナーを活用したプレゼンスキル向上研修を受講させるという選択肢があります。
将来、管理職を目指す社員には、リーダーシップ研修を用意します。
また、社員の性格や学習スタイルに合わせ、グループ研修と個別研修を組み合わせて実施するのも良いでしょう。
eラーニングなど自主学習も推奨することで、社員の意欲を高められます。OJTでは先輩社員が指導するメンター制度も活用できます。
社員の働きがいや意欲を高める教育を行う
社員の働きがいや意欲を高める教育を行うためには、まずは、仕事の意義や目的を具体的に伝える教育が大切です。
自分の仕事が会社にどのように貢献しているかを知ることで、働きがいが高まります。
例えば、新入社員研修で会社の理念やビジョンを丁寧に説明するのが良いでしょう。
また、社員の強みや可能性を引き出す教育も重要です。社員に適性検査を受けてもらい、その結果をフィードバックするセッションを設けるのが一例です。
キャリア形成支援として、社員の希望するスキルを習得できる研修制度を用意することもモチベーションアップにつながります。
さらに、メンタルヘルス等のセルフケアスキルを学べるプログラムを提供することで、働き続けられる力を養成できます。
教育の方法を多様化する
教育の方法を多様化するためには、旧態然とした集合研修だけでなく、eラーニングを取り入れましょう。
eラーニングなら時間や場所を選ばずに受講できるため効率的です。例えば、コンプライアンス教育はeラーニングで基礎知識を学習し、その後でグループディスカッションを行うといった効果的な組み合わせが効果的です。
次に、OJTを充実させることが大切です。先輩社員から実務を通じて教えてもらうOJTは、具体的なスキルを身につけられます。
OJTの質を高めるため、メンター制度の導入やOJTの指導法を学ぶ研修を先輩社員に受講してもらう必要があるでしょう。
さらに、社員同士が教え合う際のファシリテーションスキルの習得支援や、自主的な勉強会の支援なども効果的です。
多様な教育手法を組み合わせることで、中小企業でも社員のニーズに対応した効果的な育成が可能となります。
教育費用の会社負担を増やし社員の負担を軽減する
教育費用の会社負担を増やし社員の負担を軽減するためには、外部セミナー参加費や資格取得費用などの教育費用を、会社が全額負担する制度を設けることが望ましいです。
制度設計時には、年間の教育予算を計上し、社員一人当たりの上限額を定めるなどコスト管理も必要です。
中小企業ではこの予算確保が難しいため躊躇しがちですが様々な助成金や補助金があるので商工会や役所にあらかじめ相談する事も大切です。
次に、勤務時間内の教育訓練を増やすことで、社員の時間的負担を減らすことができます。例えば、月1回の研修日を設け、その日の勤務を研修に充てるのが良いでしょう。
さらに、教育内容やカリキュラムを吟味し、社員のスキルアップに真に必要な研修に集中投資することで、無駄な費用を減らすことが可能です。
「社員は会社の資産」という意識を持ち、働きながら学びやすい環境を整えることが重要だと言えます。
教育にかかる時間コストを考慮し、業務への影響を最小限にする
教育にかかる時間コストを考慮し、業務への影響を最小限にするためには研修のスケジュール調整を行い、業務の混乱が生じないタイミングで研修を設定することが重要です。
例えば業務の比較的落ち着いている時期や、大型案件の前後などを避けるなどの配慮が必要です。
また、研修の時間設定は必要最小限に留めることもポイントの一つです。コアとなる内容を精選し、短時間で効果的な研修設計を心がけましょう。
さらに、研修参加者の業務を同僚がカバーする体制を事前に決めておくことで、研修に専念できる環境を確保できます。
業務と研修の両立を図るため、通信教育やeラーニングなどの活用も検討する価値があるでしょう。
研修の意義を社内に浸透させることで、業務への影響を社員全体で協力し合いカバーしていく意識醸成も重要です。
教育効果の定期的な検証と見直しを行う
教育効果の定期的な検証と見直しを行うためには研修の前後でアンケートを実施し、参加者の理解度や満足度を確認することが重要です。
研修で修得したスキルの定着状況は、研修後一定期間たってから改めて確認する必要があるでしょう。
検証にはKPIも設定することをおすすめします。例えば、営業研修の場合は「受講後の営業成約件数」といった具体的な指標を設け、その達成状況を測定します。
定期的に教育検証の会議を開催し、研修実施部門と各部門の管理職が研修効果を確認することが望ましいです。検証結果は次回の研修計画に反映させるのがポイントです。
自己啓発型の文化を醸成するためには、各自が研修で得た学びを可視化する仕組みも有用でしょう。目に見える成長が社員の意欲向上につながります。
まとめ
中小企業の経営者にとって、社員教育は会社成長のカギを握る重要な要素です。
限られた予算や人材の中で、教育効果を高めるためには、社員一人ひとりの特徴やニーズに合わせたカスタマイズ、仕事の意義や強みを引き出す教育、多様な手法の活用、会社による教育費用支援、業務への影響最小化など、総合的な取り組みが必要です。
効果測定と改善サイクルの実行で、教育の質を高めていくことが重要です。
社員育成のための教育投資は、中長期的には企業力強化につながると捉える視点が求められます。
大変な課題ですが自社のこれからの成長のために「投資する」マインドが経営者には求められます。
お互いがんばりましょう!